茨城急行電鉄

現在リニューアル版を作成中です。5月上旬ごろに公開予定です。

○概要
 茨城急行電鉄は、東京都・埼玉県・千葉県・茨城県に路線を有する架空鉄道事業者である。常磐新幹線構想を継承して設立され、茨城に急いで行くことを目的としていることから現在の社名に決定された。略称は茨急(いばきゅう)。コーポレートカラーは紅白黒の3色で、手賀沼・牛久沼・霞ヶ浦・千波湖などの水辺に映える夕陽をイメージしている。
 その事業の中核と言えるのが、東京駅と水戸駅を僅か47分で直結する茨急本線である。途中で枝分かれする空港線と合わせると営業キロ数は116.3kmに及ぶ。これはJRを除く国内の鉄道会社では9番目に大きい数字である。ほとんどの区間が最高160km/hでの高速運転を前提に建設されており、東京―水戸間では新幹線にも劣らない速達輸送を実現している。JR常磐線や高速バスとの競合を意識して最優等列車を毎時2本運行し、東京と茨城を結ぶ旅客輸送において重要な役割を担っている。本記事ではこの茨急本線を中心に取り上げながら茨急の全体像をお伝えしていきたい。

○路線データ
 ・管轄  :茨城急行電鉄(第一種架空鉄道事業者)
 ・総延長 :104.0km(+空港線12.3km)
 ・駅数  :24駅(+空港線1駅)
 ・軌間  :1435mm
 ・複線区間:本線 東京―水戸間
 ・電化区間:全線(直流1500∨/交流20000∨)
 ・閉塞方式:車内信号閉塞式(ATC)
 ・最高速度:160km/h

 地図
   各駅の位置など詳細な地図はこちらです

○沿線風景
 茨急の起点は東京駅である。丸ノ内線の直下にあたる空間に2面4線のターミナルを構え、多くの列車が当駅を発着する。地上はビジネス街の中心地で大手金融機関の本店など格調高いビルヂングが列をなしている。8両編成の特急電車が専用のホームから出発し、地下線としてはやや速い速度で北上する。大手町を抜けて日本橋川・首都高速都心環状線の下に差し掛かると北東へ向きを変え、JRの南側に建設された神田駅に停車する。新橋などからの乗客がここで合流するが長距離利用者しか乗れない特急を見送って次の普通列車を待つ人が多い。雑居ビルが密集する神田金物通りを直進し、神田川の手前でやや急な左カーブを曲がって国道6号線・都営浅草線の直下に入る。前方には浅草橋駅の灯りが見えており、ホームには新宿・千葉方面などからの乗客が並んでいる。浅草橋を発車して駄菓子屋の多い蔵前エリアの地下を北上すると浅草駅となる。浅草寺や仲見世通りで知られる世界的な観光地の中心で、隅田川の対岸には東京スカイツリーやアサヒビール本社のオブジェが目立っている。銀座線の始発駅でもあり日本橋などからの乗客が乗車してくる。ここで全ての座席が埋まりセミクロスシートの車内には立客も少々見られるようになる。特急電車はここまで各駅に停車してきたが、次の停車駅となる土浦までは24分間ノンストップなので、確実に座席を確保したい乗客は指定席車を利用する。浅草で乗車と降車の人数比が逆転するためどの列車もここから次の停車駅までが最も混雑する。


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 浅草を出た列車はしばらく地下線を北上した後、右にカーブしながら隅田川を渡り一気に加速しながら高架に上がる。左手には隅田川沿いに大型団地が並んでおり、これは周囲の古い住宅地に火災が拡大するのを防ぐために作られた文字通りの鉄壁でもある。東武スカイツリーラインの線路に接近して鐘ヶ淵駅を通過する。荒川の長い橋梁に進入する頃、列車は160km/hに到達してようやく定速制御に移行する。付近を走行する京成線と比較して2〜3倍ほど駅間距離が長いため、すれ違う普通列車も高速運転を行っている。荒川・首都高速中央環状線を越えて葛飾区に入るが高架のまま住宅密集地を駆け抜ける。やがて京成本線と斜めに交差してお花茶屋駅を通過する。上り勾配で環状七号線をオーバーパスし、国道6号線と並行して中川を渡る。新宿付近で新金貨物線と交差して貨物線よりも大幅に緩い右カーブで常磐線に並行する。新幹線の駅のように通過線に面しないホームを持つ金町駅を通過し先行していた普通列車を追い抜く。160km/hのまま水元公園の外縁部を通り抜けて、300mほど埼玉県に入りながら江戸川を渡る。間もなく松戸の街が近づいてくると松戸駅に近い茨急松戸駅を通過する。左手に松戸競輪場が見えると列車は21世紀の森と広場に入って武蔵野線と直交し、八ヶ崎駅を通過する。ここは浅草から数えて最初の準急停車駅で、普通と準急が対面接続を行う。千駄堀池の至近距離を進んで小金原団地の傍にある小金駅を通過する。小さな森が点在する住宅地を走りながら光が丘団地をすり抜けて東武アーバンパークラインと直交し、新柏駅を通過する。従来は増尾方面から常磐線上り列車を利用するには逆方向に近い柏駅に出る必要があったが、茨急を利用することで経路の短縮が可能となり、間接的に常磐線の混雑緩和をもたらした。戸建一軒あたりの面積が徐々に広がってくると柏駅の東にある東柏駅を通過する。国道16号線と交差し、手賀沼の端に差し掛かると列車は常磐線と並行する。大型マンション群の傍を高速で進んで我孫子駅を通過し、常磐線よりも一足早く左にカーブする。そこは利根川の調整池であり、周囲が一気に開ける。

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 利根川を渡ってキャノン取手工場の隣を通り、関東鉄道常総線と直交して寺原駅を通過する。2面4線の内側2線は北方の茨急寺原総合基地に繋がっており普通列車の大半は当駅止まりとなる。寺原付近の丘陵地帯を抜けると車窓は田畑に染まり、関東平野を広く見渡せるようになる。総合基地の横を過ぎると間もなく無電区間となり直流1500vから交流20000vへの交直切り替えが行われる。小貝川を渡って紫水駅を通過する。緩くカーブしながら牛久沼の上空を貫いて牛久の住宅街に入り、常磐線と斜めに交差して茨急牛久駅を通過する。ここから先の沿線には住宅街と田畑が交互に現れる。小野川・首都圏中央連絡自動車道を跨いで北上し、阿見町に入ると荒川沖駅に近い阿見駅を通過する。霞ヶ浦分屯地の傍を掠めるように進みながら土浦の市街地に入り、常磐線と共に桜川を渡って土浦駅に停車する。浅草を出て最初の停車駅であり、土浦駅の利用客の他、対面のホームで待っていた準急列車への乗り換え客が乗降する。駅の先には4本の留置線があって準急の約半数は当駅止まりとなる。特急電車は準急に先んじて出発し、右カーブする常磐線と分かれてそのまま直進する。中貫工業団地を過ぎて神立付近の住宅地を抜けた所で千代田駅を通過する。森の中を直進して恋瀬川を渡ると石岡の街に接近し、常磐線と直交して石岡駅を通過する。友部を経由する常磐線とは異なり茨急は国道6号線に並行して真っ直ぐ水戸へ向かう。駅の少し先で空港線が分岐して隣の茨城空港駅(百里臨空都市)まで単線の線路が伸びていく。本線は道路沿いの商業施設を横に見つつ高架で進み、園部川を渡って竹原の集落付近を通り、明治茨城工場の隣を走って小美玉駅を通過する。駅は大型の構造物に覆われており茨急主導で内部の開発が進められている。駅間が長い茨急本線の中で石岡―小美玉間は最も長く、8.4kmの距離がある。ただし空港線の石岡―茨城空港間は12.3kmでさらに長い。森林の中を進んで東関東自動車道を跨ぎ、茨城町駅を通過する。涸沼(ひぬま)川を渡って水戸の市街地に接近する。左にカーブして巨大な茨城県庁を正面に捉えると間もなく笠原駅を通過する。周辺にはショッピングモールなどもあり、水戸市街南部における中心地と言える。高架のまま市街地を進んで県民文化センターや千波湖に接近し、減速しつつ常磐線と合流して終点の水戸駅に到着する。

○駅一覧(本線のみ)
累km  特急準普
000.0 ●●◎○ 東京   Tokyo
001.2 ●●◎○ 神田   Kanda
002.9 ●●◎○ 浅草橋  Asakusabashi
004.6 ●●◎○ 浅草   Asakusa
008.0 │││○ 鐘ヶ淵  Kanegafuchi
010.4 │││○ お花茶屋 Ohanajaya
014.1 │││○ 金町   Kanamachi
017.5 │││○ 茨急松戸 Ibakyu-Matsudo
021.4 ││△○ 八ヶ崎  Hachigasaki
023.9 │││○ 小金   Kogane
026.3 ││△○ 新柏   Shin-Kashiwa
028.7 │││○ 東柏   Higashi-Kashiwa
032.2 │││○ 我孫子  Abiko
038.2 ││◎○ 寺原   Terahara
043.0 ││◎○ 紫水   Shisui
049.0 ││◎○ 茨急牛久 Ibakyu-Ushiku
055.4 ││◎○ 阿見   Ami
062.0 ●●◎○ 土浦   Tsuchiura
068.7 ││◎○ 千代田  Chiyoda
076.4 │●◎○ 石岡   Ishioka
084.8 │空◎○ 小美玉  Omitama
092.6 │港◎○ 茨城町  Ibarakimachi
099.6 │直◎○ 笠原   Kasahara
104.0 ●通◎○ 水戸   Mito
※△……通勤準急は通過。

 茨急本線の駅は全部で24駅あり、総延長104.0kmの路線としては非常に少ない。これは茨城県内の沿線地域が車社会であり、駅から遠くても駐車場さえ完備されていれば自動車から乗り継いで鉄道を利用できると考えられるためである。また輸送密度の小さい区間(=列車の運転本数が少ない、したがって種別も増やしにくい)で速達性を確保するには駅そのものを少なくすることが有効である。近距離区間(東京―寺原間)での平均駅間距離も3km近くあり、こちらは普通列車も高速運転を行うことで可能な限り優等待避を減らし、路線全体の速達性を高めるためにこうした設定となっている。
 茨急では大部分の区間で高速運転を行うということもあり、安全性を高めるためにホーム柵の設置が徹底されている。発着するのは基本的に4ドア車だが、一部の編成は2ドア車も連結しているため、列車の種類を検知した上でどの扉を開けるか判定される。なお茨急では全列車が8両編成だが、将来の増結を想定して全駅のホーム有効長が10両編成に対応している。

○運賃設定

営業キロ数 普通運賃
000〜004km 240円
005〜009km 360円
010〜014km 480円
015〜019km 600円
020〜024km 720円
025〜029km 840円
030〜034km 960円
営業キロ数 普通運賃
035〜039km 1080円
040〜044km 1200円
045〜049km 1320円
050〜054km 1440円
055〜059km 1560円
060〜064km 1680円
065〜069km 1800円
営業キロ数 普通運賃
070〜074km 1920円
075〜079km 2040円
080〜084km 2160円
085〜089km 2280円
090〜094km 2400円
095〜099km 2520円
100〜km 2640円
 茨急の運賃は高い。初乗り運賃は240円で、5km毎に120円が加算されていく。キロ当たりの運賃は大半の区間でJR電車特定区間の2倍程度である。常磐線と重なる区間での運賃を比較すると、東京−我孫子間はJRの640円に対して茨急は960円、東京−土浦間ではJRの1140円に対して茨急は1680円、東京−水戸間ではJRの2270円に対して茨急は2640円である。これでも常磐線と比較すると走行距離は短い(JR121.1kmに対して茨急104.0km)。速達効果が大きいために特急料金込みと考えればむしろ安いと言えるが、列車の速さに比例して運賃加算の勢いも増すので結果的に割高感を助長しているのは確かである。
 一部の列車には指定席車が連結されており、こちらの料金は一律500円となっている。普通運賃からは考えられないほどの低価格であり、茨急には有料特急が存在しないため唯一の着席保証サービスとして頻繁に利用されている。詳細については車両の項目で解説する。
 定期外の利用を促すため、主に観光客を対象として様々な企画乗車券を発売している。その内の1つ「茨急印籠切符」は茨急線全線に乗り放題のフリーパスで、1日券が6000円、2日券が10000円である。その他にも接続する交通機関や沿線の観光拠点とタイアップした割引制度を複数用意し、行楽客などから好評を得ている。

○ダイヤ
時刻表
時刻表
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 茨急は常磐新幹線の代替路線であるため、速達性に重点を置いている。主な需要は都心と沿線各地を結ぶ地域輸送、都心と水戸・茨城空港を結ぶ都市間輸送に二分される。そのためダイヤ設定の傾向も郊外路線と都市間路線の性格を併せ持っている。一般的な路線と同様、平日朝は都心方面、平日夕方〜夜間にかけては郊外方面の列車が特に混雑する。直通輸送では常磐線や高速バスと競合しているが、都市間路線の激しい競合で知られる京浜地区や京阪神地区などの場合と比較すると2倍以上の距離がある長期戦であり、途中には沿線人口の少ない地域も多く存在する。そのため高頻度運転を実施しても利便性に差がつきにくく、少ない運転本数であっても着実に時間短縮を重ねることが重要となる。この点ではJRと京成電鉄における成田空港連絡輸送の競合に類似していると言える。近距離区間でもこれに近い状況があり、対都心の所要時間では並行路線と比較して10分前後の短縮効果があるため、本数がやや少なくても有利な輸送が可能である。車両運用の制約としては、直流専用電車と交直流電車の区別がある。茨城県石岡市に存在する気象庁地磁気観測所への影響を避けるため、近い地域を走行する常磐線やつくばエクスプレスと同様、途中区間で直流と交流の切り替えを行う必要が生じる。そのため直流専用電車が担当できるのは東京―寺原間に限定される。交直流電車は高価なため最小限の運用に留め、近距離区間の需要は直流専用車を中心に対応することが望ましい。茨急のダイヤはこうした条件を踏まえて設定された。
 運行される種別は特急・エアポート急行・準急・普通の4本立てを基本としており、いずれも乗車券だけで利用できる。特急は1日を通して毎時2本運転され、浅草―土浦―水戸でノンストップ運転を行い、東京―水戸間を最短47分で結ぶ。表定速度132.8km/hは新幹線を除く国内の列車では最速である。土浦で準急との接続を行い、土浦以北から東京方面、土浦以南から水戸方面への利用も可能となっている。常磐線における特急系統に相当する。エアポート急行は主に茨城空港への輸送を担当する種別で、浅草―土浦間はノンストップ、以遠では石岡・茨城空港に停車する。東京―茨城空港間を42分で結び、従来の半分以下の所要時間で空港にアクセスできるようになった。こちらも毎時2本の運転で、浅草―土浦間は特急と合わせて15分間隔でノンストップ列車が走ることになる。特急とエアポート急行に充当される編成は着席需要に対応するために指定席車を連結している。準急は東京―浅草の各駅と八ヶ崎・新柏、寺原からの各駅に停車する。近距離区間では常磐特快やTX快速を意識した停車駅設定となっている。表定速度は97.2km/hでこちらも速い。八ヶ崎で普通列車との緩急接続が行われ、千葉県内から都心方面の利便性も確保している。半数の列車は土浦で特急と接続した上で水戸へ向かい、残り半数の列車は土浦止まりとなって後続のエアポート急行に接続する。平日朝の最混雑時間帯には上り列車が通勤準急として運転され、こちらは浅草―寺原間をノンストップとすることで遠近分離を図っている。常磐線における快速系統に相当する。普通は主に直流専用車で運行され、全ての駅に停車する。東京―寺原間の運転が基本で、この区間での表定速度は60.3km/hである。この数字は一般的な私鉄路線の最優等種別に匹敵する。
 東京から見て日中の運行パターンは1時間あたり特急2本・エアポート急行2本・準急4本・普通4本の合計12本である。普通列車は金町で特急またはエアポート急行、八ヶ崎で準急を待避するパターンを継続する。通勤時間帯には主に近〜中距離の需要が高まるため、平日夕方には普通4本が追加される。そして平日朝の最混雑時間帯には上り準急が通勤準急となり、その代償として普通列車の本数がさらに増やされ、特急2・エアポート急行2・通勤準急4・普通12の合計20本/hが走る。普通と準急の緩急接続がなくなるため東京から八ヶ崎以遠の準急通過駅への所要時間が延びるが、通過待ちの回数を1回以内に抑えつつ本数を増やすことで一定の利便性を確保している。ダイヤにおける最大の特徴は、早朝深夜を除き寺原―水戸間の運転本数が1日を通して全く変化しないことである。交直流電車の必要数を最小にするために近距離区間の需要変動は直流電車の本数増減で対応している。水戸駅から見ると特急・準急がそれぞれ毎時2本のパターンが1日を通して継続される。日中は輸送力過剰となるが、利便性を保つために準急も一定の頻度で運行している。定期営業列車の運転本数は1日あたり特急35往復、エアポート急行34往復、準急・通勤準急77往復、普通111往復の合計257往復である。土休日ダイヤは平日の日中パターンとほぼ同様の構成になっている。

○車両
時刻表
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 IBX-1000系は普通列車に使用される直流通勤型電車である。交流区間に対応していないため寺原―水戸間の入線はできない。形式番号の"IBX"は茨城急行電鉄(IBaraki-eXpress)に由来する。制御装置には定速運転機能付きのIGBT素子VVVFインバータを採用している。4M4Tの8両編成を組み、起動加速度3.0km/h、最高速度130km/hに対応する。長門車輌の標準規格に沿って設計されており、車体はアルミニウム合金製、車両の大きさは全長20m・全幅2800mmとなっている。地下区間の安全な走行に対応するため難燃性の素材を使用し、前面には緊急避難用に貫通扉を持つ。運転台のノッチ操作・ブレーキ操作は共に車両の荷重を考慮した上で制御に反映されるため、様々な状況において安定した運転が可能となっている。またホーム柵の設置を前提としているためTASC制御によって定位置停止を支援する。運転台にはモニタ装置が搭載され、路線や各車両の状況を常時表示している。集電装置はシングルアーム型でばね上昇、圧縮空気下降式である。
 デザインコンセプトは「あの空へ雲も追い抜く夢列車」であり、運賃の割高感を車両の高級感で相殺し、快適な移動を実現するために趣向を凝らしている。ラインカラーは茨城急行電鉄のコーポレートカラーと共通の紅白黒3色である。側面に4箇所の両開きドアを有し、表裏ともに木目調の塗装が施されている。内装は明るい銀色を基本に、木目調のドアと黒色のロングシートが目を惹く。座席は1人分の着席区画を明確化したパケットシートで、適度に柔らかく奥行きがあるため楽に着席することができる。7人掛けのスペースを2:3:2に分ける形でスタンションポールが設置されている。側面の窓は大型の熱線吸収ガラスを採用し、部分的に開放することで換気が可能である。また空調設備には空気清浄機が併設されている。室内照明は2列のLEDが担っており、カバーで覆うことで柔らかい明るさとしている。ドア上にはLCD式車内案内表示器及び広告用液晶ビジョンを備えて各種情報の提供を行うほか、車内の通信環境も完備する。19編成152両が在籍する。
 IBX-2000系は主に準急・エアポート急行・特急列車に使用される交直流近郊型電車である。4M4Tの8両編成を組み、起動加速度は2.2km/h、最高速度は160km/hとなっている。基本的な仕様は1000系と共通しているが、こちらは直流区間と交流区間の両方に対応しており、走行性能も更に高速域を重視して調整されている。電圧回路を車上で切り替えるために変圧器や整流器などの機器を装備し、屋根上には絶縁用の碍子が集まっていて物々しい風貌となっている。無電区間を通過する際には車両側で自動的に交直切り替えを行う。
 車内のデザインは1000系と同様の雰囲気にまとめられている。最大の違いは座席配置がセミクロスシートになっている点である。片側4箇所のドア間中央部に1つずつ、1両あたり合計6箇所の4人掛けボックスシートが配置されており、ドア付近は2人掛けの短いロングシートとしている。これにより幅広い客層と多様な混雑状況に対応する。また長距離の利用を考慮して4両ごとに洋式の個室トイレを持つ。特急・エアポート急行に充当される編成の場合、8両中2両は2階建ての指定席車両となっている。側面に2箇所の片開きドアを有し、こちらの座席は全て2人掛けの回転式クロスシートである。座席側面に照明器具が1つずつ設置され、前席背面に可動式のテーブルを備えるほかフットレスト・可動式枕も利用できる。全ての座席で電源コンセントも利用でき、さらに床面を絨毯敷きとすることで走行音や足音を抑制している。検札はカードリーダーシステムで自動化されており、乗客は事前に指定した座席を簡便確実に利用することができる。特急・エアポート急行用が9編成72両、準急用が10編成80両で合計19編成152両が在籍する。

○競合関係

東京―水戸 茨急特急 約 50分 2640円※ 毎時 2本
  ↓   常磐線ひたち/ときわ 約 70分 3820円 毎時 2本
  ↓   常磐線中距離電車 約140分 2270円 毎時 2本
  ↓   高速バス(みと号) 約110分 2080円 毎時 3本
※ただし座席指定には500円の別料金が生じる。
 東京と水戸を往復する需要は大きく、この区間ではJR常磐線と高速バスが競合してきた。JRの特急には常磐線全線で速達輸送を行うひたち号と、主に勝田以南で運転されるときわ号の2種類があり、両者合わせて毎時2本の高頻度で運転されている。ひたち号は東京−水戸間を最速72分で走破し、100.9km/h という在来線としては極めて高い表定速度を記録する。また2015年に上野東京ラインが開業すると特急列車の多くが東京・品川への直通を果たし、同区間のメインルートとしての地位をより強固なものにした。水戸以外にも日立やいわき・仙台方面のビジネス客が多く利用する他、各種イベント時は行楽客の利用も多く、ひたち号を中心に比較的混雑する。一方の高速バスも気軽に利用できることから人気を得ており、運賃は2080円で常磐線特急の約半額、普通列車よりも安く設定されている。所要時間が不安定かつ長いのが難点だが、八潮PAでつくばエクスプレス線に乗り継ぐことで首都高速道路の渋滞を回避できる。JRバス・茨城交通・関東鉄道の3社で運行されており、水戸近郊の経由地点を複数の内から選択できるなど細やかな需要に対応する。
 茨急はこの競合に加わる形となり、常磐新幹線の代替路線という目的に基づいて速達性を最重要視することとした。特急電車を利用する場合の所要時間は最短47分(表定速度132.8km/h)で、ひたち号よりもさらに速く、新幹線の東京−宇都宮間、東京−高崎間と並ぶ所要時間で移動できる。新幹線は騒音対策のために大宮以南で減速運転を強いられるため、本来の実力を発揮できていないという事情はあるが、少なくとも関東圏内においては常磐新幹線のイメージに相応しい高速輸送を実現していると言えそうである。新幹線並の速達性は高額運賃に説得力をもたらし、多くの利用客を獲得している。また常磐線特急は水戸―いわき・仙台方面の需要や佐貫・友部などからの着席需要に定員を集中でき、競合というよりは相互に補完する形の輸送が可能となる。価格面では高速バスに太刀打ちできないため、こちらの利用者の動向は現実とあまり変わらないと考えられる。この他の区間においても、所要時間では茨急、運賃ではJRに軍配が上がる区間が多い。茨急はJR線と比較して近道を高速走行しているために所要時間がJR線の半分程度になる区間も多いが、複々線化済の常磐線に対して全線複線の茨急は輸送力で劣るため、ラッシュ時の大混雑を避けるために過度な競合は避けている。
東京―茨城空港 茨急エアポート急行 約 40分 2280円※ 毎時2本
   ↓   高速バス(空港線) 約100分  500円 随時(日間8本)
上野―成田空港 京成スカイライナー 約 40分 2470円 毎時1―2本
日本橋―成田空港 京成アクセス特急 約 60分 1330円 毎時1―2本
※ただし座席指定には500円の別料金が生じる。
 東京―茨城空港間の輸送では、現在のところ高速バスが有利な状況である。関東鉄道バスは空港利用者500円、それ以外の乗客でも1200円という圧倒的な低価格で運行を行っており、本数は少ないものの利用しやすくなっている。格安航空会社を中心に発着している茨城空港では移動手段の安さは特に重要なため、この点では勝負のしようがない。これは空港利用促進を目的とした茨城県による出資を受けての結果である(茨急はひとまず出資を受けない場合の設定としている)。真の競合相手として意識すべきは成田空港と京成電鉄である。茨城空港は東京から直線距離で約80kmを隔てた非常に遠い空港であり、羽田・成田に続く第三の首都圏空港として躍進するためには高速な連絡輸送手段が必要不可欠である。しかし京成成田スカイアクセス線の開業や首都圏中央連絡自動車道の延伸により成田空港の利便性が向上し、成田空港自体も施設の拡張によってその能力を強化してきたため、相対的に茨城空港の存在意義が薄れつつある。茨急空港線では毎時2本の都心直通急行を運行して成田空港に次ぐ交通利便性をアピールしているが、決定的な切り札とはなっていない。なお水戸方面から空港に直通する列車は設定されていないが、これは県内からの空港利用者は圧倒的多数が自家用車を利用すると考えられるためである。その代わりエアポート急行は土浦・石岡の両駅に停車し、都心―空港間直通客以外の利用も可能としている。

○関連事業
 茨急では沿線の活性化のために複数の関連事業を運営している。路線バス事業は茨急の駅と周辺地域を結ぶことで鉄道事業を補完し、八ヶ崎・寺原・土浦・水戸の各営業所を中心に広域な輸送を行う。駅から遠い住宅地への数少ない公共交通機関だが、特に茨城県内では自家用車の普及率が高く駅前にも無料駐車場が整備されているため、地元の需要は限定的である。そのため都内などからの観光客による利用を促すべく茨急印籠切符と組み合わせた宣伝活動を駅や車内で進めている。
 沿線開発で目立つのは、茨城県小美玉市美野里地区の大規模住宅地である。この開発ではコンパクトシティの思想が取り入れられ、住宅・商業・医療・交通などを直結することで暮らしやすい生活空間が作られている。また茨城空港の利用促進にも力を入れている。茨城空港は航空自衛隊百里基地を官民共用とすることで誕生した空港で、実際の運用では自衛隊側が優先されるため民間機の離着陸に支障をきたす場合があった。さらに東京都心から80kmもの距離を隔てた位置に存在するということもあり、首都圏第三の空港としては未だ認識されていない。現在のところ茨城県など北関東からの利用が中心で、需要を安定させるためには都心方面からの利用者を少しでも多く取り込みたい所である。茨急では毎時2本東京駅直結42分のエアポート急行を広告の中心に据えた上で、空港駅周辺を百里臨空都市として開発することで認知度向上を図っている。空港本体の容量には限界があるが、利便性向上をアピールすることで利用客増加を狙う。
 ファンサービスの一環として寺原駅付近の小型ビルに茨急博物館を設立している。本記事で解説しているような事柄について精緻な模型・シミュレータを交えて展示している施設で、窓からは寺原駅にやって来る列車を一望できる。またレストランも入っており、店内の座席には茨急の車両と同一の製品が使用されていて、実際には行われていない指定席車の車内販売で提供される予定だった食事を楽しめる。毎年11月には寺原総合基地の一般公開が行われ、寺原駅と車庫を結ぶ回送列車にも抽選で乗車できるようになる。他の事業者や団体が主催するイベントにも積極的に参加し、物販などを行っている。

○沿革
 常磐線にあたる路線は常磐炭田の石炭を輸送することを目的に建設され、古くから貨物輸送の大動脈であった。やがて東北本線岩沼駅まで線路が繋がると同線のバイパスとしての役割も担うようになり、仙台以北へ直通する多くの優等列車が常磐線を経由するようになった。戦後しばらくして高度成長期を迎えると非常に激しい混雑が慢性化し、これを緩和するために通勤五方面作戦が開始され、地下鉄千代田線に直通する形で1982年に取手までの複々線化が完了した。さらに第二常磐線計画が検討され、紆余曲折を経て2005年に首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスが開業した。貨物需要が減少したこともあって常磐線全体の輸送力不足は改善されつつある。しかし全国的な新幹線建設ラッシュの中で常磐新幹線の計画は具体化していない。長距離の旅客需要は依然として大きく、特急列車はスピードアップや増便によって国内最高クラスの利便性を実現しているが、所要時間の短縮は既に限界を迎えつつあった。
 茨城急行電鉄は、常磐新幹線を新たな高速通勤路線として実現するために構想された。ルートの設定は常磐線に関連する未成線計画・廃線跡をもとにしている。東京駅はつくばエクスプレスの延伸が予定されている位置にあり、新幹線の代替路線として東京駅直結が優先されたために同線と並行して乗り入れる形をとった。また第二常磐線計画では東京を起点に筑波研究学園都市に向かう茨城県案と我孫子に向かう千葉県案があり、史実では前者が採用されたため、茨急では千葉県案が採用されていた場合のルートを考えて途中で我孫子を経由することとした。また新幹線の代替であることから高規格・最短距離の路線を意識した。石岡から水戸に至る経路は戦前に廃線となった水戸電気鉄道の延伸計画を参考に、車社会が一般化した現代の状況に合う形で取り入れたものである。なお第二常磐線計画も元を辿ると水戸方面の通勤新幹線という構想が現れるが、現実のつくばエクスプレスは常磐線の混雑緩和と沿線の宅地開発を主な目的として建設されており、運営面でも第三セクター方式ならではの制約が多く存在するため、茨急では東京―水戸間の高速輸送に特化した全く新しい路線を考えることとした。
 社名「茨城急行電鉄」は、東京と茨城を高速で直結するという役割から名付けられた。東京急行電鉄、旧・千葉急行電鉄(現在の京成千原線)、栃木急行電鉄(架空)などの影響を受けている。茨城高速鉄道という案もあったが、略称となる茨高の発音が茨城交通のものと被るために避けられた。バス会社の茨城急行自動車と被っている点については、路線の設定地域が離れていることから問題は小さいと判断された。
 用地取得と路線建設、その他の事業は一瞬で完了し、2017年10月14日に全線が開業した。現在の様子はこれまでの項目で解説した通りである。将来はいわき・仙台方面への延伸が計画されているが、土浦以北の準急の増発と全体的な運賃引き下げも求められている。茨城急行電鉄の歴史は始まったばかりである。

○あとがき
後書きに代えて100の質問に答えました。

○参考
※書籍
・川島令三(2004)『全国鉄道事情大研究 常磐篇』草思社
・川島令三(2010)『東海道ライン第12巻 東京北東部・埼玉南東部』講談社
・川島令三(2017)『鉄道配線大研究』講談社
・樋口昌明(2007)『図解 鉄道のしくみと走らせ方』昭和鉄道高等学校
・秋山芳弘(2009)『図解入門 よくわかる最新鉄道の基本と仕組み』秀和システム
・谷川一巳(2013)『空港まで1時間は遠すぎる!?』交通新聞社新書
・『MYLINE 東京時刻表』2017年10月号 交通新聞社
・『特集 都市鉄道の急行運転』「鉄道ピクトリアル」2001年12月号
・『特集 東京の私鉄ターミナル』「鉄道ピクトリアル」2011年5月号
・『特集 車両の客室(通勤車)』「鉄道ピクトリアル」2014年5月号
・『特集 エアポートアクセス』「鉄道ファン」2006年12月号
・『つくばエクスプレス』「るるぶ情報版」2015年12月 JTBパブリッシング
※WEBページ(全て2018年1月参照)
・「首都圏新都市鉄道」(http://www.mir.co.jp/)
・「関東鉄道」(https://kantetsu.co.jp/)
・「京成電鉄」(http://www.keisei.co.jp/)
・「TSUKUBA EXPRESS STYLE」(https://mir.tx-style.net/)
・「通勤電車研究所」(http://www1.odn.ne.jp/beni/rail/top.html)
・「Zone-S」(https://www.zone-s.net/frame-top)
・「抜け蔵」(http://nukezo.s601.xrea.com/)
・「鉄道解析ごっこ」(http://www.geocities.jp/jtqsw192/)
・「デスクトップ鉄のデータルーム」(http://www.desktoptetsu.com/)
・「TAKAの交通論の部屋」(http://www.geocities.jp/daijitk/)
・「鉄っちゃんの小部屋」(http://www.ken-k.pvsa.mmrs.jp/)
・「ダイヤ鉄がゆく〜ダイヤグラム作成と駅と街の研究」(http://diagram01.com/)
・「東京〜水戸の移動手段まとめ」(http://kakuyasu-ryoko.com/matome/tokyo-mito/)
・「みと号 東京水戸線」(http://blog.goo.ne.jp/wakasaliner/e/2a948d5e20c0da823d9be8eed0693616)
・「常磐高速バス『みと号』を八潮パーキングで下車してみた」(http://sanotaku.at.webry.info/201505/article_1.html)
・「TJライナーについて考える」(http://tc1151234.seesaa.net/article/448860917.html)
・「茨城空港、開港7年で見せ始めた意外な健闘」(http://toyokeizai.net/articles/-/155046)
・「茨城空港を利用してみる〜茨城から札幌旅行〜」(http://blog.livedoor.jp/chirauradayori/archives/42585416.html)




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