茨城急行電鉄

地図

○茨急の概要
 茨城急行電鉄は、東京都、埼玉県、千葉県、茨城県に路線を有する架空鉄道事業者である。茨城に急いで行くという設立目的に合わせて現在の社名に決定された。略称は茨急(いばきゅう)。紅白黒の3色をコーポレートカラーに採用しており、車両のデザインを始めとして様々な場面に表示される。沿線に河川や湖沼が多いことから水面に映える夕陽をイメージして決定された。営業キロ数は136.6kmでJRを除く国内の鉄道会社としては8番目に長い。鉄道による旅客輸送を基本としつつバスの運行や沿線開発など多種多様な事業を展開しており、茨城方面の大手私鉄として重要な役割を担っている。
 鉄道事業者としては茨急本線、筑波線、空港線の合計3路線を運行する。新規開業路線の例に漏れず全線が高架または地下に建設されており、道路との平面交差が存在しない。これにより安全かつ安定した列車運行が可能となった。指定席車両を除く全ての列車が追加料金不要で利用できる上、列車同士の緩急接続が徹底されており、駅間距離が長くどの電車も高速運転を行うので路線全体が速達輸送の恩恵を受けられる。積極的な直通運転を行う東北新幹線の成功例を意識して支線列車の本線直通を増やし、早朝深夜を除く全ての列車が起点の東京発着となる。最大の特徴はスピードである。大部分の区間が最高160km/hでの高速運転を前提に設計されており速達性が売りになっている。中でも毎時2本運転される特急は都市間連絡の主役を担い、東京駅と水戸駅を僅か48分で直結する。これは新幹線の東京―宇都宮間、東京―高崎間に匹敵する所要時間である。部分的にではあるが常磐新幹線の夢を叶える列車だといえる。また駅についても現代の事情を反映した設定がなされている。全駅に可動式ホーム柵を設置しているため転落事故のリスクが比較的低い。郊外区間の駅前には駐車場が完備されており自家用車との乗り継ぎが容易にできる。中長距離の高速輸送を担う鉄道、駅と自宅を結ぶ自家用車という棲み分けによってマイカー社会と協調している。

○茨急の沿線風景
 茨急本線の起点は東京駅である。地下鉄丸ノ内線の直下にあたる空間に2面4線の駅が広がっている。地上はビジネス街の中心地であり、大通りに沿って大手金融機関の本店など格調高いビルヂングが列をなしている。長いエスカレーターを上れば堂々たる赤煉瓦の駅舎が視界に現れる。そんな大都会の下、行先に「水戸」を掲げた8両編成の特急電車が発車する。地下線としてはやや速い90km/hで北上していく。大手町のビル街を抜けると首都高速都心環状線に覆われた日本橋川に差し掛かり、やがて斜め右にカーブすると1面2線の神田に到着する。地上では中小規模の雑居ビルが密集している。JR線との乗り換えは東京駅よりもこちらが近い。出発時刻になってもホームに残る人が多いが、これは特急が浅草―土浦間の途中駅に停車しないためである。金物通りの地下を直進し、神田川の手前で左にカーブして都営浅草線に合流する。国道6号線に沿って北上すれば1面2線の浅草橋である。ホームには日本橋、新宿、飯田橋などからの乗り換え客が主に集まっている。ここで座席は完全に埋まり、何人かの立客が見られるようになる。ただし4・5号車の指定席を利用すれば着席が保証され、車内環境もより快適である。隅田川に沿って北上する。周辺は駄菓子屋の多い蔵前地区である。都営線には蔵前駅があるが茨急は駅を設置していない。雷門のあたりまで進むと1面2線の浅草となる。東武線や地下鉄と連絡しているが、つくばエクスプレスの浅草駅からは離れている。浅草寺や仲見世通りで知られる世界的な観光地の中心で、対岸を見れば東京スカイツリーやアサヒビール本社のオブジェがそびえ立っている。その手前の首都高速6号向島線では茨城方面へのバスも多く走っている。当駅で乗車と降車の人数が逆転するため次の停車駅までが最混雑区間となる。
 浅草を出た特急は土浦まで停まらない。右に大きくカーブして隅田川を渡り、左にカーブしながら高架へと駆け上がる。車窓では隅田川沿いに並ぶ大型団地が目立つ。これは周囲の住宅地に火災が拡大するのを防ぐために作られた鉄壁だと言われている。しばらく進んで東武スカイツリーラインと並行し、2面2線の鐘ヶ淵を通過する。荒川と綾瀬川を合わせた長い橋梁に進入する。ここで列車は160km/hに到達し、ようやく定速制御に移行する。駅間距離が長いのですれ違う普通電車も高速運転を行っている。首都高速中央環状線の下を潜って葛飾区に入る。住宅密集地を矢のように突き進むと京成本線と斜めに交差し、2面2線のお花茶屋を通過する。次の金町までは3.8kmある。団地の傍を通り抜けて東へ進み、上り勾配で環状七号線を越える。そのまま中川を越えると正面には東京理科大学のキャンパスが現れる。新金貨物線と交差しながら貨物線よりも大幅に緩い右カーブで常磐線の北側に回る。下り勾配で常磐線に並んでしばらく併走し、自動車教習所の看板が見えてくると金町を通過する。中央に島式ホームを挟んだ1面4線の待避駅で、水戸方には朝ラッシュ時にここで折り返すための引上げ線がある。また朝ラッシュ時には浅草―当駅間で通過運転を行う快速電車が運行される。普通電車を追い越すと間もなく左カーブで常磐線と別れて江戸川に並行する。土手に沿って北上し、東京外環自動車道と交差する。東金町の公園を過ぎると右にカーブし、300mほど埼玉県を通って江戸川を渡る。千葉県に入って2面2線の茨急松戸を通過する。他路線と連絡していないために利用客は松戸駅よりずっと少ない。沿線住民が松戸市街地に向かうためだけの駅といえる。商業地域を抜けて常磐線と新京成線の線路を跨ぎ戸建の住宅街を進む。次の八ヶ崎まで4.1kmもある。北松戸、上本郷など他路線の駅が近いため、周辺の需要はそちらに任せて茨急は遠方に向かう。正面に医療センターと森林が見えてくると間もなく武蔵野線と交差して八ヶ崎を通過する。2面4線の待避駅で準急と普通が緩急接続を行う。武蔵野線を経由して各方面からの乗客が集まるが、特急は遠近分離のために当駅を通過する。
 千駄堀池の緑地を抜けて大きく左にカーブする。住宅1棟あたりの面積が徐々に広がり、畑も点在するようになって車窓は郊外へと移り変わる。カーブを終えると小金原の団地群が近づいてきて2面2線の小金を通過する。この地区ではバスでJR北小金駅へでなければ鉄道を利用できなかったが、茨急線の開業により事情が一変した。左手に麗澤大学の丘が見えてくると右にカーブし、光が丘団地の中央を通り抜ける。間もなく東武アーバンパークラインと交差して新柏を通過する。2面4線の通過型待避駅であり朝夕のラッシュ時に当駅での追い越しが設定されている。JR柏駅に出る必要があった東武線沿線の通勤客が茨急に移ることで、所要時間が短縮されるだけでなく間接的に常磐線の混雑緩和がなされた。緑豊かな新興住宅地を北上する。左手に柏の繁華街が見えてくると2面2線の東柏を通過する。ちばらぎの渋谷とも呼ばれる商業地域からは1km以上離れており、こちらは落ち着いた住宅地となっている。沼南方面の団地へ向かうバス路線が発着していて柏市東部の交通拠点となっている。国道16号線を越えると手賀沼の端を回るように右へカーブする。常磐線を跨いで下り勾配で地上に降りる。壁のようにそびえる大型マンション群は工場の跡地が再開発されたものである。その麓でしばらく併走して1面2線の我孫子を通過する。JR常磐線・成田線と接続しており茨城県内の茨急沿線から柏市中心部へ向かう場合の乗換駅となる。準急の停車駅であり都心への輸送では茨急が最速である。しかし茨急には当駅始発の列車が存在せず、混雑時の快適移動という点ではJRよりも不利である。高架へ上って常磐線よりも一足早く左へカーブする。高台の研究施設を通り過ぎると視界が開けて一面に水田が広がるようになる。利根川の調整池である。長い橋梁を渡って茨城県に入り、キャノン取手工場を右に見ながら住宅地を北上する。やがて関東鉄道常総線と交差して2面4線の寺原を通過する。外側2線が本線であり、内側2線は車両基地に繋がっている。取手市役所が近く関東鉄道バスの拠点でもあるので利便性は高い。
 普通電車の運転区間はここで終了し、以降は準急が各駅停車の役割を担う。駅間距離がさらに長くなる。丘陵の住宅地を抜けると開けた水田地帯となり、車庫線が分岐して地上の車両基地へと降りていく。間もなく無電区間となり、直流1500vから交流20000vへの交直切り替えが自動で行われる。小貝川を渡って2面2線の新藤代を通過する。藤代紫水高校が近く、伊奈地区の集落やワープステーション江戸へ向かうバス路線にも連絡している。高架のまま進んで牛久沼を越える。水域が細く入り組んでいるため川のようにも見える。住宅地があるので駅を設置する構想も出たが、ここに準急が止まると特急から逃げ切れなくなるために断念された。アヤメ園が見えてくると牛久の市街地に入り、JR常磐線と斜めに交差して2面2線の牛久を通過する。牛久大仏や稲敷方面へ向かうバス路線と連絡する。牛久シャトーや牛久市役所の傍を掠めるように進み、住宅地を抜けると首都圏中央連絡自動車道と交差しながら左にカーブする。ひたち野うしくの新興住宅地の東側を北上する。林と田園が交互に現れると2面2線の阿見を通過する。JR荒川沖駅の南東1.5kmに位置し、周辺には商業施設や親水公園を擁する落ち着いた住宅街が広がる。まばらな住宅地を北上する。自衛隊霞ヶ浦駐屯地のあたりで緩く右カーブし、土浦の市街地が近づいてくる。県道に並行して花室川を渡り、上り勾配で高台を越えると周囲は低くなり、盛土を進む常磐線列車が視界に入る。共に速度を落として霞ヶ浦に繋がる桜川橋梁を渡る。そこは1943年に発生した列車衝突事故の現場であり、線路の付近には慰霊碑が立てられている。常磐線の直上へと進路を移して立体駐車場を通り過ぎれば2面4線の土浦である。すぐ隣では準急の水戸行きが扉を開けて待っており、土浦―水戸間の各駅へ向かう乗客が乗り換えていく。JRとの2階建て構造となった土浦駅はさながら新幹線駅のようである。
 土浦を出るとすぐに筑波線が分岐する。筑波線はかつての筑波鉄道を土浦―筑波間に限り作り直した路線で、茨急の開業で茨城方面の観光需要が増大することを見込み、東京―筑波間の直通列車を設定している。運行本数は毎時2本程度で全列車が線内各停となるため、速達性を確保するためにいくつかの駅を省略している。一方、茨急本線はまっすぐ水戸へ向かう。友部経由の常磐線よりも経路を短縮するために水戸街道沿いのルートを選択している。常磐線と別れて神立の工業団地を通り過ぎると右にカーブし、国道6号線に並行する。ゆとりのある住宅地を進んで2面2線の千代田を通過する。ホームからは筑波山を始めとする山々がはっきりと見える。周囲には森と草原が広がってのどかな風景となる。やがて右にカーブして国道6号線と共に恋瀬川を渡る。市街地に入ると常磐線と交差し、島式ホーム1面2線の石岡を通過する。乗降客数は多いが、当駅の需要は先ほど接続した準急に任せて特急は水戸へ直行する。次の小美玉までは8.5kmで茨急本線の中では一番長い。石岡第一高校の傍を直進すると高台の商業施設群が見えてくる。下り勾配で切り通しを進んで国道6号線と斜めに交差する。高台を抜けて再び高架となると単線の空港線が分岐し、本線は園部川を渡って緩く左にカーブする。車窓には大正地池で釣りをしている人が見える。しばらくすると左手に古い工場が見えてきて2面2線の小美玉を通過する。国道6号線に並行して北東に進む。東関東自動車道を跨ぐと田園となり、2面2線の茨城町を通過する。駅前の人口は少ないが立体駐車場には多くの車が入っている。また道路沿いに集落が点在するためバス路線も発着している。涸沼川を渡れば水戸の街が見えてくる。北関東自動車道を越えて市街地に入り、巨大な茨城県庁を正面に捉える。県庁の目の前にある2面2線の笠原を通過する。市内各地へのバス路線もあり水戸市南部の重要拠点となっている。ショッピングセンターに直結しているため買い物などの利便性も高い。街の中を北上すると車窓には県民文化センターと千波湖が現れる。水郡線の車両や貨物用のコンテナが見えてくると右へカーブし、JR線と並行して1面2線のホームに入る。終点の水戸である。常磐線と水郡線、そして鹿島臨海鉄道線に連絡する。駅前には商業施設やホテルが立ち並び、水戸城址や弘道館などの歴史的建造物も徒歩圏内に存在する。当駅で他路線に乗り換えて水戸以遠へ向かう乗客も多い。東京駅から48分、距離の割には短い旅であった。

○茨急の運賃

営業キロ数 普通運賃
000〜004km 240円
005〜009km 360円
010〜014km 480円
015〜019km 600円
020〜024km 720円
025〜029km 840円
030〜034km 960円
営業キロ数 普通運賃
035〜039km 1080円
040〜044km 1200円
045〜049km 1320円
050〜054km 1440円
055〜059km 1560円
060〜064km 1680円
065〜069km 1800円
営業キロ数 普通運賃
070〜074km 1920円
075〜079km 2040円
080〜084km 2160円
085〜089km 2280円
090〜094km 2400円
095〜099km 2520円
100〜km 2640円
 茨急の運賃は高い。対キロ区間制を基本としており、数キロ毎の乗車距離に応じて料金が加算される。初乗り運賃は240円で、5km毎に120円が加算されることになる。1kmあたりの運賃はJR電車特定区間の約2倍程度となっている。常磐線と重なる区間での運賃を比較すると、東京−我孫子間はJRの640円に対して茨急は960円、東京−土浦間ではJRの1140円に対して茨急は1680円、東京−水戸間ではJRの2270円に対して茨急は2640円である。なお東京―水戸間の営業キロ数はJRが121.1km、茨急が104.2kmである。経路をショートカットしていてもこの結果なので、茨急の運賃設定はかなり高いと言わざるを得ない。速達効果が大きいために特急料金込みと考えればむしろ安いとも考えられるが、列車の速さに比例して運賃加算の勢いも増すので結果的に割高感を助長しているのは確かである。JR以外と比較すればどうだろうか。高額な運賃設定で有名な北総鉄道の場合、初乗り区間3km以内の運賃は200円、最長の区間となる30km〜33kmの運賃は830円である。部分的には例外もあるが茨急の方が若干高い。尤も北総鉄道を利用して都心に出るとすれば京成線/都営線の運賃も合わせて払うことになるため、茨急が単独で都心に乗り入れることを考慮すると実質的にはほぼ同額に近くなろう。また茨急に近い条件で建設されたつくばエクスプレスの場合、初乗り区間3km以内の運賃は170円、最長の区間となる58km〜59kmの運賃は1190円である。ワンマン運転を始めとする経費削減の結果として、つくばエクスプレスの運賃は最近の路線としては安い設定となっている。茨急もこれに近づける努力をするべきだと言う人もいるが、良くも悪くも準新幹線としてのイメージが内外に強いため大幅な値下げには至っていない。茨急では定期券の割引率も低い。通勤定期券の割引率は40%で、平均利用日数が週4日以下の場合は回数券の方が安価となる。東京―水戸間で6ヶ月間有効の通勤定期券は289080円である。財布落としても定期落とすな、が沿線住民の合言葉になっている。
 着席保証サービスを実現するため、茨急では指定席車両を導入している。特急と急行を合わせた毎時4本の列車において、8両編成の中央2両は2階建ての指定席車両である。車内空間の快適性は普通車よりも高く長距離利用に適している。気軽にできる贅沢として様々な利用者に好評である。料金は一律500円で普通運賃からは考えられないほど安い。これは着席需要と乗車時間の関係を考慮した結果の設定である。茨急特急の場合、最も長い東京―水戸間を利用しても僅か48分で到着してしまう。この程度の乗車時間ではあまり高額な追加料金を払う気にはなれない。そのため簡単に利用できるような設定を行った。こうしたバランスは最近になって座席指定制度を導入した京王電鉄や京阪電鉄などの例を参考にしている。座席指定券は各駅の券売機で購入できる。発車直前になるか全ての座席が埋まれば販売終了となる。指定した座席のキャンセルはできない。空席の照会はWEB上で可能なので、どの列車のどの座席を選ぶのか事前に決めておけば簡単に予約できる。
 茨急では2種類の企画乗車券を提供している。1つは「茨急印籠きっぷ」という周遊パスである。これを利用すれば茨急電鉄の鉄道・バス全線に乗り放題となる。東京から筑波山や水戸周辺へ向かう観光客を主なターゲットとしており、利用は土休日に限られる。価格は1日券が4000円、2日券が5000円。観光地での各種サービスも充実しているので利用しやすいといえる。もう1つは空港の利用を促進する「茨急エアポートきっぷ」である。東京都心と茨城空港を安く直結するために設定された。購入は茨城空港発着の航空便を利用する人に限られる。価格は2000円で、もちろん往復料金である。茨城県による出資を受けて行う官民共同の事業で、同様の制度が関東鉄道の高速バスでも適用されている。詳細は競合関係の項目で解説する。

○茨急のダイヤ
時刻表
 茨急は常磐新幹線の代替という役割を意識しており速達性に重点を置いている。特に東京―水戸間、東京―茨城空港間は全線を乗り通す需要が大きく、それぞれ毎時2本の高速優等列車を走らせる。この列車をダイヤの中心として位置づけ、ラッシュ時であっても日中と同じ高速運行を維持することを目指したい。路線の主な需要は都心と水戸・茨城空港・筑波山を結ぶ都市間・観光輸送、都心と沿線各地を結ぶ地域輸送に二分される。そのためダイヤ設定の傾向も都市間路線と郊外路線の性格を併せ持っている。一般的な路線と同様、平日朝は都心方面、平日夕方〜夜間にかけては郊外方面の列車が特に混雑する。列車の速達性を損なわない範囲で増発を行う必要がある。ほぼ全区間に渡ってJR常磐線と並行しており競合関係にある。茨急は全体的に速達性が高いため運行本数が少なくても有利な輸送をしやすい。特に東京―水戸間の直通輸送については100km以上の長期戦であり、途中には沿線人口の少ない地域も存在する。そのため高頻度運転を実施しても利便性に差がつきにくく、少ない運転本数であっても着実に時間短縮を重ねることが重要といえる。車両運用の制約としては、直流電車と交直流電車の区別がある。茨城県石岡市に存在する気象庁地磁気観測所への影響を避けるため、近い地域を走行する常磐線やつくばエクスプレスと同じく、直流と交流の切り替えを行う必要が生じる。そのため直流電車が走行できるのは寺原以南に限定される。やや高価な交直流電車の必要数を抑えるため、近距離区間の需要には主に直流電車で対応したい。
 茨急で運行している列車種別は特急、急行、準急、普通が中心である。朝ラッシュ時には快速が追加されるため全部で5種別となる。特急は、茨急本線の主役を担う最優等列車である。浅草―土浦―水戸間でノンストップ運転を行い、東京―水戸間を48分で結ぶ。ラッシュ時を含めて全ての列車がこの所要時間で走る。表定速度130.3km/hは新幹線を除く国内の列車では最速である。土浦で準急との接続を行い、土浦以北から東京方面、土浦以南から水戸方面への利用も可能となっている。日中は毎時2本運行される。常磐線における特急系統に相当する。急行は、茨急本線および空港線を直通する空港アクセス列車である。浅草―土浦間では寺原のみに停車し、土浦以遠は千代田、石岡、茨城空港の順に各駅停車となる。東京―茨城空港間を50分で結んでおり従来の半分以下の所要時間で移動できるようになった。茨城空港の需要が限定的であるため停車駅を増やして様々な利用目的に対応している。日中は毎時2本運行される。準急は、主に中〜長距離の地域輸送を担う列車である。浅草―寺原間では八ヶ崎と我孫子にのみ停車し、普通の運行区間が終わる寺原以遠では各駅停車となる。八ヶ崎で普通と緩急接続を行い土浦で特急または急行に連絡する。表定速度は83.4km/hでこちらも速い。日中は東京―水戸間の列車が毎時2本、東京―筑波間の列車が毎時2本で合わせて15分間隔となる。常磐線における快速(中距離電車)に相当する。快速は、朝ラッシュ時にのみ運行される短距離速達列車である。浅草―金町間の2駅を通過し、金町以遠では各駅停車となる。金町発着の普通電車と連携して混雑の分散を図る。表定速度は65.8km/h。15分間隔の運行となる。普通は、主に近距離の地域輸送を担う列車である。東京―寺原間の区間運転が基本で、全ての駅に停車する。金町で特急または急行を待避、八ヶ崎で準急に連絡し、ラッシュ時には新柏で待避する列車もある。表定速度は59.0km/hで近距離の各停としては異例の高速輸送を実現している。日中は準急に合わせて毎時4本、15分間隔での運行となる。常磐線における緩行電車に相当する。
 茨急のダイヤは30分サイクルのパターンを基本としている。緩急接続を重視しており、八ヶ崎で準急と普通、土浦で特急または急行と準急が相互に連絡する。これにより優等列車が停車しない駅の利用者も速達サービスを利用できる。日中は1時間あたり特急2本、急行2本、準急4本、普通4本の合計12本が運転される。途中駅に停車する列車は、東京―石岡間で毎時4本以上、石岡―水戸間で毎時2本以上である。東京―寺原間では毎時4本の普通電車が各駅停車のを役割を担い、寺原―土浦間では毎時4本の準急がその役割を引き継ぎ、土浦―石岡間は水戸行きの準急と茨城空港行きの急行が合わせて毎時4本運行されて途中の各駅に停車、空港行きの急行が別れる石岡―水戸間では毎時2本の水戸行き準急が残って全ての駅に停車する。運行本数は首都圏としては比較的少ないが、等間隔運転と緩急接続を徹底することで高い利便性を確保している。夕ラッシュ時のダイヤは日中のものをベースに構成されている。毎時4本運行であった普通電車が毎時8本にまで増発されて近距離区間の輸送力を高めている。東京駅の発車間隔は5分または10分と幅があるが、10分空く列車の3分前に下り準急が発車しており、この準急は日中と同様に八ヶ崎で普通電車に接続するため、八ヶ崎―寺原間の乗客はそちらにも分散される。したがって10分空く方の普通電車が極端に混むということはない。寺原以遠の混雑はさほどでもないので中距離以上の列車は増発されない。1時間あたり特急2本、急行2本、準急4本、普通8本の合計16本が運転される。朝ラッシュ時のダイヤも日中のものに基づいている。夕ラッシュ時との違いはあちらで増発した4本の普通電車が4本の快速と4本の金町始発電車に置き換わっていることである。これにより近距離区間内でも遠近分離が実現し、近距離電車の混雑度は低く抑えられる。乗客が集中しやすいのは準急だが、中距離以遠の主要駅である寺原や土浦などからは特急・急行の利用が主であり、最混雑区間の始まる八ヶ崎にはやや余裕のある状態で到着している。そして浅草―寺原間に停車駅のない特急・急行はさほど混まない。難点は準急通過駅の運行間隔が最大9分空いてしまい、ホームに人が滞留しやすいということである。1時間あたり特急2本、急行2本、準急4本、快速4本、普通8本の合計20本となっている。

○茨急の車両
車両
 IBX-1000系は快速、普通電車に使用される直流通勤型電車である。交流区間に対応していないため寺原―水戸・筑波・茨城空港間には直通できない。形式番号の"IBX"は茨城急行電鉄(IBaraki-eXpress)に由来する。制御装置には定速運転機能付きのIGBT素子VVVFインバータを採用している。4M4Tの8両編成を組み、起動加速度3.0km/h、最高速度130km/hに対応する。長門車輌の標準規格に沿って設計されており、車体はアルミニウム合金製、車両の大きさは全長20m・全幅2800mmとなっている。地下区間の安全な走行に対応するため難燃性の素材を使用し、前面には緊急避難用に貫通扉を持つ。運転台のノッチ操作・ブレーキ操作は共に車両の荷重を考慮した上で制御に反映されるため、様々な状況において安定した運転が可能となっている。またホーム柵の設置を前提としているためTASC制御によって定位置停止を支援する。運転台にはモニタ装置が搭載され、路線や各車両の状況を常時表示している。集電装置はシングルアーム型でばね上昇、圧縮空気下降式である。デザイン面でも運賃の割高感を車両の高級感で相殺し、快適な移動を実現するために趣向を凝らしている。ラインカラーは茨城急行電鉄のコーポレートカラーと共通の紅白黒3色である。側面に4箇所の両開きドアを有し、表裏ともに木目調の塗装が施されている。内装は明るい銀色を基本に、木目調のドアと黒色のロングシートが目を惹く。座席は1人分の着席区画を明確化したパケットシートで、適度に柔らかく奥行きがあるため楽に着席することができる。7人掛けのスペースを2:3:2に分ける形でスタンションポールが設置されている。側面の窓は大型の熱線吸収ガラスを採用し、部分的に開放することで換気が可能である。また空調設備には空気清浄機が併設されている。室内照明は2列のLEDが担っており、カバーで覆うことで柔らかい明るさとしている。ドア上にはLCD式車内案内表示器及び広告用液晶ビジョンを備えて各種情報の提供を行うほか、車内の通信環境も完備する。18編成144両が在籍する。
 IBX-2000系は特急、急行、準急に使用される交直流近郊型電車である。4M4Tの8両編成を組み、起動加速度は2.2km/h、最高速度は160km/hとなっている。基本的な仕様は1000系と共通しているが、こちらは直流区間と交流区間の両方に対応しており、走行性能も更に高速域を重視して調整されている。電圧回路を車上で切り替えるために変圧器や整流器などの機器を装備し、屋根上には絶縁用の碍子が集まっていて物々しい風貌となっている。無電区間を通過する際には車両側で自動的に交直切り替えを行う。車内のデザインは1000系と同様の雰囲気にまとめられている。最大の違いは座席配置がセミクロスシートになっている点である。片側4箇所のドア間中央部に1つずつ、1両あたり合計6箇所の4人掛けボックスシートが配置されており、ドア付近は2人掛けの短いロングシートとしている。これにより幅広い客層と多様な混雑状況に対応する。特急・急行に充当される編成の場合、8両編成の中央2両は2階建ての指定席車両となっている。側面に2箇所の片開きドアを有し、こちらの座席は全て2人掛けの回転式クロスシートである。座席側面に照明器具が1つずつ設置され、前席背面に可動式のテーブルを備えるほかフットレスト・可動式枕も利用できる。全ての座席で電源コンセントも利用でき、さらに床面を絨毯敷きとすることで走行音や足音を抑制している。乗客は事前に指定した座席を簡便確実に利用することができる。また長距離の利用を考慮して指定席車両寄りの3・6号車に大型の個室トイレを設置している。特急・エアポート急行用が9編成72両、準急用が13編成104両で合計22編成176両が在籍する。

○茨急のライバル

東京―水戸 茨急特急 約 50分 2640円 毎時 2本
  ↓   常磐線ひたち/ときわ 約 70分 3820円 毎時 2本
  ↓   常磐線中距離電車 約140分 2270円 毎時 2本
  ↓   高速バス(みと号) 約110分 2080円 毎時 3本
 東京と水戸を往復する需要は大きく、この区間ではJR常磐線と高速バスが競合してきた。JRの特急には常磐線全線で速達輸送を行う「ひたち」と、主に勝田以南で運転される「ときわ」の2種類があり、合わせて毎時2本の高頻度で運転されている。「ひたち」は東京−水戸間を標準72分で走破し、100.9km/h という在来線としては極めて高い表定速度を記録する。また2015年に上野東京ラインが開業すると特急列車の多くが東京・品川への直通を果たし、同区間のメインルートとしての地位をより強固なものにした。水戸だけでなく日立やいわき、仙台方面へ向かう人も多く利用する他、各種イベント時は行楽客の需要もあり利用率は高い。一方の高速バスも気軽に利用できることから支持されており、運賃は2080円で常磐線特急の約半額、普通列車よりも安く設定されている。所要時間が不安定かつ長いのが難点だが、八潮PAでつくばエクスプレス線に乗り継ぐことで首都高速道路の渋滞を回避できる。JRバス・茨城交通・関東鉄道の3社共同で運行されており、水戸近郊の経由地点を複数の内から選択できるなど細やかな需要に対応する。茨急はこの競合に加わる形となり、常磐新幹線の代替路線という目的に基づいて速達性を売り込むこととした。特急電車を利用する場合の所要時間は48分(表定速度130.3km/h)で、ひたち号よりもさらに速く、新幹線の東京−宇都宮間、東京−高崎間と並ぶ所要時間で移動できる。新幹線は騒音対策のために大宮以南で減速運転を強いられており本来の実力を発揮できていないという事情はあるが、少なくとも関東圏内においては常磐新幹線のイメージに相応しい高速輸送を実現していると言えそうである。新幹線並の速達性は高額な運賃にも説得力をもたらし、特別に急いで行きたい人からの高い利用率を獲得している。ただし内装のグレードは指定席車でも常磐線特急に及ばず、車内の快適性を最重要視する人は常磐線特急を利用する。また価格面では高速バスに太刀打ちできない。競合というよりは相互に補完する形の輸送となっている。

東京―茨城空港 茨急急行 約 50分 1000円※ 毎時2本
   ↓   高速バス(空港線) 約100分  500円 随時(日間8本)
上野―成田空港 京成スカイライナー 約 40分 2470円 毎時1―2本
日本橋―成田空港 京成アクセス特急 約 60分 1330円 毎時1―2本
 茨城空港は航空自衛隊百里基地を官民共用とすることで誕生した空港で、現在のところ茨城県を始めとする北関東からの利用が中心である。需要を安定させるためには都心方面からの利用者を少しでも多く取り込みたい所である。東京―茨城空港間の輸送では、現在のところ高速バスが有利な状況となっている。関東鉄道バスは空港利用者500円、それ以外の乗客でも1200円という圧倒的な低価格で運行を行っており本数は少ないものの利用しやすくなっている。格安航空会社を中心に発着している茨城空港では移動手段の安さは特に重要なためこの点では勝負のしようがない。これは空港利用促進を目的とした茨城県による出資を受けての結果である。茨急も高速交通機関として同様の出資を受け、空港利用者は片道あたり1000円となる茨急エアポートきっぷを販売している。ここでも急ぐ人と費用対効果を求める人とで需要を分担している。真の競合相手として意識するべきは成田空港と京成電鉄であろう。茨城空港は東京から直線距離で約80kmを隔てた非常に遠い空港であり、羽田・成田に続く第三の首都圏空港として躍進するためには高速な連絡輸送手段が必要不可欠である。しかし京成成田スカイアクセス線の開業や首都圏中央連絡自動車道の延伸により成田空港の利便性が向上し、成田空港そのものも施設の拡張によってその能力を強化してきたため、相対的に茨城空港の存在意義が薄れつつある。茨急空港線では毎時2本の都心直通急行を運行して成田空港に次ぐ交通利便性をアピールしているが、決定的な切り札とはなっていない。なお水戸方面から空港に直通する列車は設定されていないが、これは県内からの空港利用者は圧倒的多数が自家用車を利用すると考えられるためである。その代わり急行は寺原、土浦、千代田、石岡の各駅に停車し、土浦では筑波山行きの準急に接続するというように、都心―空港間直通客以外の利用も可能としている。

東京―筑波 茨急急行&準急 約 50分 2000円 毎時2本
秋葉原―沼田 TX快速&関鉄バス 約 80分 1650円 毎時2本
 都内から筑波山へ向かう行楽需要も大きい。こちらは休日の企画乗車券を基準に比較していく。現実のメインルートはつくばエクスプレスと関東鉄道バスを利用するものである。TX快速は秋葉原―つくば間を45分で結び、終点のつくばで筑波山方面のバス路線に連絡している。筑波山観光を前提とした企画乗車券は2種類あり、ケーブルカーとロープウェイを含むものが筑波山きっぷ、含まないものが筑波山あるきっぷである。秋葉原からの料金は前者が4300円、後者が3300円である。一方、茨急は東京―土浦―筑波のルートでこれに対抗する。全区間の直通準急もあるが土浦で接続する急行を利用すれば所要時間は48分に抑えられる。こちらの筑波駅は筑波山のすぐ麓にあるので駅からの移動時間は短い。またオールロングシート化が進むTXに対してセミクロスシートの準急や指定席車連結の急行を走らせる茨急は快適性で勝る。ただし料金は茨急印籠きっぷを利用しても4000円で、これには当然ケーブルカーもロープウェイも含まれていない。価格面ではTX&関鉄バスに劣るといえる。

 茨急はほぼ全線に渡ってJR常磐線と並行しており、沿線住民の通勤通学など日常利用でも乗客を奪い合っている。路線網の強さは常磐線が圧倒的で、上野、北千住、柏、取手、佐貫、友部、勝田などは茨急が通っておらず、これらの駅の利用者は常磐線が独占している。新規開業路線である茨急は乗り換えに時間のかかる駅が多く、JR線内での乗り換えとなり一部は上野東京ラインにも直通する常磐快速線、地下鉄千代田線に直通する常磐緩行線に対して不利な部分がある。東京、金町、我孫子、牛久、土浦、石岡、水戸を高速で結んでいるのは茨急で、これらの駅では茨急が有利となっている。接続する私鉄路線の乗客も別れており、東武アーバンパークラインや関東鉄道常総線の沿線では茨急に乗り継ぐことで従来よりも遥かに短い所要時間で都心へ出ることができる地域がある。複々線化済の常磐線に対して全線複線の茨急は輸送力で劣るためラッシュ時の混雑を一気に引き受けることはできないが、これについては高い運賃と長い駅間距離が適度な乗客分散という結果をもたらしている。

○茨急の関連事業
 茨急では沿線の活性化のために複数の関連事業を運営している。路線バス事業は茨急の駅と周辺地域を結ぶことで鉄道事業を補完し、八ヶ崎・寺原・土浦・水戸の各営業所を中心に広域な輸送を行っている。駅から遠い住宅地への数少ない公共交通機関であるが、特に茨城県内では自家用車の普及率が高く駅前にも無料駐車場が整備されているため、地元の需要は限定的といえる。そのため都内などからの観光客による利用を促すべく茨急印籠きっぷと組み合わせた宣伝活動を駅や車内で進めている。特に大規模なのは牛久大仏への輸送である。休日を中心に観光客が多く、付近の道路や駐車場は混雑が激しくなっている。茨急では牛久駅への所要時間が大幅に短縮されたことをアピールするとともに、茨急印籠きっぷを使えば牛久からのバス料金も免除されることから茨急利用を勧めている。
 ファンサービスの一環として寺原駅付近の小型ビルに茨急博物館を設立している。茨急電鉄に関係する様々な事柄を模型・シミュレータを交えて公開している施設で、窓からは寺原駅にやって来る列車を一望できる。またレストランも入っており、店内の座席には茨急の車両と同一の製品が使用されていて、実際には行われていない指定席車の車内販売で提供される予定だった食事を楽しめる。毎年11月には寺原総合基地の一般公開が行われ、寺原駅と車庫を結ぶ回送列車にも抽選で乗車できるようになる。他の事業者や団体が主催するイベントにも積極的に参加し、物販などを行っている。

○茨急の成り立ち
 茨急の元になった構想は常磐線の歴史に遡る。1889年に水戸鉄道が開業し、小山―水戸間が鉄道で結ばれた。この路線は日本鉄道に譲渡されて水戸線となる。7年後の1896年には日本鉄道土浦線が田端―友部まで繋がり、その翌年には日本鉄道磐城線の水戸―岩沼間が開業した。友部に繋げたのは新規敷設区間を短縮してコストを抑えるためで、水戸以遠へは遠回りする経路となった。こうして田端―岩沼間の路線が完成して海岸線と改称され、5年後には日暮里―三河島間が開通して田端でのスイッチバックが解消された。1906年には日本鉄道の全路線が国有化されて海岸線は常磐線と呼ばれるようになった。常磐炭鉱の石炭を運ぶ貨物需要が大きく日暮里―平間は東北本線に先行して複線化された。線形や輸送力の面で本線よりも有利だったことから東北方面の長距離列車は常磐線経由が主力となった。茨城県に気象庁柿岡地磁気観測所があるため取手以北の電化ができなかったが、交流電化が実用化されたことで順次電化が進められ、1967年には全線電化が完了した。一方で東北本線も複線電化と線形改良が進んだため、常磐線経由であった特急列車が東北本線経由となった。常磐線を走る特急がなくなったので上野―平間に特急「ひたち」が新設された。取手以南を中心として沿線人口が急増したために大規模な輸送力増強が必要となり、1965年を初年度として国鉄第三次長期計画が推進され、その一環として5方面作戦と呼ばれる線増事業が始まった。1971年に綾瀬―我孫子間、1982年に我孫子―取手間の複々線化が完了した。緩行線の電車は快速が止まらない綾瀬で地下鉄千代田線に直通するが、これは費用を削減したい国鉄と北綾瀬の車両基地まで自社で管理したい営団との利害が一致したためであり、結果的に複雑な運賃構造などの問題が生じた。1987年に国鉄が民営化されてJRとなり、同年には通勤型では初となる15両編成の列車が運転されるようになった。2年後には「スーパーひたち」が新設されて在来線初の130km/h運転を行い、上野―水戸間は1時間6分で結ばれるようになった。2005年にはつくばエクスプレスの開業を意識したダイヤ改正がなされ、中距離電車の130km/h運転が始まり、上野―土浦間には特別快速が設定された。2007年には普通列車のグリーン車が営業運転を開始した。2011年に東日本大震災が発生して甚大な被害を受ける。復旧および除染を進めながら徐々に運転区間を拡大し、全線復旧に近づいている。一方、2015年には上野東京ラインが開業して一部の常磐線列車も品川まで直通するようになった。後に増発されて特急列車のほぼ全てが品川直通を果たした。
 そしてつくばエクスプレスである。1971年に通勤新幹線構想が発表され、成田、水戸、宇都宮、高崎、甲府、小田原へ向かう高速新線が計画された。このうち成田新幹線は建設が中止され、他の各線も新幹線を通勤利用させればよいということで具体化しなかった。新幹線計画のない水戸方面だけは残り、狭軌で建設して日立方面に直通するといった案が検討されたが、国鉄の財政悪化によって実現しなかった。この構想に期待した茨城県を中心として1978年には東京―筑波研究学園都市―土浦を結ぶ第二常磐線構想が発表された。第二常磐線は常磐新線と呼ばれることになり、まず東京―守谷間を開業させて需要動向をうかがい、それから筑波研究学園都市方面への延伸を検討するという計画が運輸政策審議会の答申で取り上げられた。しかし沿線自治体としては筑波までの一挙開業が妥当であるとし、運輸省やJR東日本と共に設立した常磐新線整備検討委員会では秋葉原―筑波研究学園都市を130km/hで結ぶことが決定された。1988年には一体化法が成立して常磐新線の沿線開発に向けた準備が整えられていった。常磐新線は国鉄が建設および運営を行うことになっていたが、分割民営化後のJR東日本は採算性への疑問から協力を断るようになり、沿線自治体と民間企業を中心とする第三セクターの首都圏新都市鉄道が設立された。区間快速の通過駅が全20駅中4駅しかないのは全ての自治体に1つ以上の快速停車駅を設けるためであり、第三セクターの性質を象徴する列車だといえる。1996年に秋葉原―つくば間の第一種鉄道事業の免許を取得し、2年後に着工した。建設資金のうちで有利子貸付金は6%でしかなく償還の面では有利である。しかしバブル景気が終わったことで需要予測は下方修正され、編成は10両から6両に短縮、2階建て車両や転換クロスシートは無し、ワンマン運転の導入といったコストカットが進められた。路線名のつくばエクスプレスは公募で決定されて2001年に発表され、2005年に全線が開業した。各種施策に加えて沿線のイメージ作りも功を奏しており利用者は増え続けている。8両編成化や東京・つくば以遠延伸が望まれているが具体化していない。
 以上の2路線に並行する路線として茨急は構想された。核になる動機は水戸方面の通勤新幹線であり、最高速度160km/h、東京―水戸間を48分で結ぶ準新幹線という基本の位置づけはここから来ている。高速新線としての設定はつくばエクスプレスを大いに参考にしており、全線が高架または地下で踏切がなく、全駅にホーム柵を設置するといった路線設定に影響している。新幹線の役割を担うためには他の新幹線への接続を考慮して東京駅に乗り入れる必要があり、その空間とルートについてもTXの東京延伸計画を流用している。近距離区間のルート設定は常磐新線の千葉県案を参考にした。史実のTXは東京から筑波研究学園都市に至る茨城県案を採用しているが、千葉県からは東京から南流山または新松戸を経て我孫子に至るルートも提案されていた。千葉県案が採用された常磐新線を想定し、武蔵野線の新駅設置が予定されている八ヶ崎を経由するようにすれば、常磐線のライバルとして面白い路線設定が可能になると考えた。またリアリティを重視すれば地下線を主とするべき区間であるが、それでは景色を見ることができないのと住宅密集地の駅を北越急行美佐島駅のようにするのは困難であることから地上区間を中心に構成した。石岡―水戸間では水戸街道に並行し、友部回りの常磐線を短絡するルートをとっている。茨城県庁の近くを経由することも容易なため常磐線沿いとは違った存在価値を生み出せる案である。戦前は実際に水戸電気鉄道という路線が計画されていたが、水戸駅の乗り入れが果たせず終点側も茨城町まで延ばしたところで廃止されてしまった。茨急小美玉駅は水戸電気鉄道の計画上の終点であった堅倉に位置し、茨急本線は当時の目的を受け継ぐ路線となっている。また石岡―茨城空港間については高速電車を直通させれば茨城空港の利用促進も可能だと考えて設定した。水戸も茨城空港もつくばエクスプレスの延伸が構想されているが、費用対効果の問題や第三セクターのしがらみなどがあって理想的な形にはなりにくいと思われる。ここでは茨急の空想で満足しておきたい。地方ではマイカーが交通の主役であり、鉄道はパークアンドライドでこれに協調しつつ中長距離の安全な高速輸送で自動車と差別化していく必要がある。また常磐線とつくばエクスプレスは共に高い速達性を誇る路線であり、これに並行するからには徹底的な高速路線でなければ利用価値を生み出せないと考えられる。可能な限り短い距離をずっと高速で走れるような線形を目指しながら上記の案を繋げた結果、現在の茨急が完成した。高速走行時の安定性を重視して標準軌を採用したために常磐線との直通運転はしにくくなったが、水戸の乗り換えはさほど不便ではないので大きな問題にはなっていない。常磐線とつくばエクスプレスの弱点を補い、常磐方面の交通をさらに便利で快適なものにしていくことが茨急の使命といえる。茨急の歴史はこれからである。

○参考
※書籍
・川島令三(2004)『全国鉄道事情大研究 常磐篇』草思社
・川島令三(2010)『東海道ライン第12巻 東京北東部・埼玉南東部』講談社
・都市高速鉄道研究会(2007)『つくばエクスプレス建設物語』成山堂書店
・谷川一巳(2013)『空港まで1時間は遠すぎる!?』交通新聞社新書
・『MYLINE 東京時刻表』2017年10月号 交通新聞社
・『特集 常磐線』「鉄道ピクトリアル」1989年4月号
・『特集 都市鉄道の急行運転』「鉄道ピクトリアル」2001年12月号
・『特集 車両の客室(通勤車)』「鉄道ピクトリアル」2014年5月号
・『特集 常磐線「国電区間」』「鉄道ピクトリアル」2016年10月号
・『つくばエクスプレス』「るるぶ情報版」2015年12月 JTBパブリッシング
※WEBページ(全て2018年1月参照)
・「首都圏新都市鉄道」(http://www.mir.co.jp/)
・「関東鉄道」(https://kantetsu.co.jp/)
・「京成電鉄」(http://www.keisei.co.jp/)
・「TSUKUBA EXPRESS STYLE」(https://mir.tx-style.net/)
・「通勤電車研究所」(http://www1.odn.ne.jp/beni/rail/top.html)
・「Zone-S」(https://www.zone-s.net/frame-top)
・「抜け蔵」(http://nukezo.s601.xrea.com/)
・「鉄道解析ごっこ」(http://www.geocities.jp/jtqsw192/)
・「デスクトップ鉄のデータルーム」(http://www.desktoptetsu.com/)
・「TAKAの交通論の部屋」(http://www.geocities.jp/daijitk/)
・「鉄っちゃんの小部屋」(http://www.ken-k.pvsa.mmrs.jp/)
・「ダイヤ鉄がゆく〜ダイヤグラム作成と駅と街の研究」(http://diagram01.com/)
・「東京〜水戸の移動手段まとめ」(http://kakuyasu-ryoko.com/matome/tokyo-mito/)
・「みと号 東京水戸線」(http://blog.goo.ne.jp/wakasaliner/e/2a948d5e20c0da823d9be8eed0693616)
・「常磐高速バス『みと号』を八潮パーキングで下車してみた」(http://sanotaku.at.webry.info/201505/article_1.html)
・「TJライナーについて考える」(http://tc1151234.seesaa.net/article/448860917.html)
・「茨城空港、開港7年で見せ始めた意外な健闘」(http://toyokeizai.net/articles/-/155046)
・「茨城空港を利用してみる〜茨城から札幌旅行〜」(http://blog.livedoor.jp/chirauradayori/archives/42585416.html)




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